今月の一作品

2004年11月

太陽と月の儀礼

「太陽と月の儀礼」
 ヤムナー・デーヴィー
縦185.5センチ×横371.4センチ

*絵をクリックすると拡大図がご覧頂けます*
この作品は、震災後画像データを探し出せなかったため、
2ページに渡る画集から取り込みました。
継ぎ接ぎになり、申し訳ございません。


 ミティラー画を描く描き手の中では、珍しく自分の名前を書けない人。それでもナショナル・アワードをもらった。アウト・カーストと呼ばれる階級外の婦人で他の描き手から10年も前に描くことができなくなったと聞いている。
 医者に診てもらっても直らない時はオジャと呼ばれる女性祈祷師に会いに行く。亡くなった息子だか娘の、その子供だったか、その霊が入り込んでいるために病気になったことがわかり、その魂を出してもらう。アニミズムがまだ生きている世代の描き手。
 足しげくミティラー地方に通っていた頃、たくさん持ってきた彼女の絵の中から月の絵が気に入り、それだけを買い続けた。他の人のパターンを真似したり、単純な描き易い文様を装飾に使ったりするのを止めるようにアドバイスしたりしたこともあった。そのうち、日本人は月が好きだということで私が訪れる時には大小様々の何枚もの月の絵を持ってきた。その絵がだんだん良くなっていく。月も4つの月を大きな紙に描いたり、16の月や36の月を描いたりした。埼玉県立近代美術館で「わくわく!!どきどき!!サマー・ミュージアム!」展が開催された時、彼女の絵はミロの絵の傍に置かれたと記憶している。このような彼女の自由奔放で童話のような柔らかな世界がこの世に生まれたことを祝福したい。
 この絵も185.5×371.4というコンクリート擬似壁に描いてもらったもの。彼女の作品はこの巨大なキャンパスの大きさで7枚近くはコレクションしている。何度か日本に招待して描いてもらった。今回の新潟中越地震でも彼女の絵は無事だと思える。いつかこのような大作を広い会場でたっぷりと公開したいものだ。





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