今月の一作品

2004年6月

結婚式のチョークと村の生活

「結婚式のチョークと村の生活」
 ジヴヤ・ソーマ・マーシェ
横365センチ×高さ182センチ
1996年

*絵をクリックすると拡大図がご覧頂けます*

 この作品は96年から97年にかけて製作された。96年は初めてワルリー画の描き手を招待した。今もそうだが、他の国の描き手を招待したり、その国の絵画の美術館を作るなどというのはあまりにデリケートなことなので、特にミティラー画と関わってくればくるほどその思いが深く、簡単に他の絵画を、とはならない。ミティラー画に関する収集や研究、展示活動等は当時あるところまできていた。ワルリー画は、より人類の原初という要素があり、魅力もあるので他のどこかの美術館が、あるいは誰かがやるのかなと思っているとそうでもない。佐渡の赤泊村がミティラー美術館が提案する国際交流を継続する中で、また他の文化施設からミティラー画のようなものは他にはないのかというような期待があり、どこもやらないのならと描き手を呼ぶことにした。やってきたジブヤ・ソーマ・マーシェとその息子は大阪の朝日カルチャーセンターの事務局長の協力要請でアジア太平洋トレードセンターで開催した「インド民族アート展」会場で公開製作をすることになった。その方は88年の時に朝日新聞の編集委員で天声人語にミティラー画を取り上げてくれた。岡本太郎氏がこの絵に感激していたと伝えると直接本人に電話されて、「この絵画はもっと評価されないといけない」と言われたと教えてくれた。この大阪の会場は横浜のランドマークタワーのような建物で、大変広くてコンクリートを塗った擬似壁を何枚も運び込んだ記憶がある。そんな時、農耕民でもある彼らはよく協力してくれた。ジブヤもニコニコしながら輝いていたように思える。そして、次から次に大作が驚異的に生まれた。それは驚くほどの速さで。生き生きとしたワルリー画が続々と生まれた。この絵もその頃の作品である。
 彼らの独特な描き方をよく見ていくと髪を振り乱れているのが悪霊、一本の長い髪を後ろにたらして描かれているのが司祭。冠のようなものをかぶっているのが神。花嫁、花婿もよく見ると形が異なるのでわかる。このような大作が世界にはないのが残念だ。インドの人達に見せてあげたい。そんなふうに思っている。
 絵の詳しい内容は図録「インドの先住民族ワルリーの絵画 自然と共生の芸術世界」を参照してください。











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