自然がくれるものをきく

十三夜月が、青紫の、ゆっくりとながれる雲にやわらかい。美術館から歩くと、自分の影が月に向かってどんどん長くうすくなっていく。うしろにある影は大きさを変えない。前の影が森に消えたとき、うしろの影は限りなく濃く深くなり、影が歩いているよう。アスファルトの道の小さな小石の影は、地球の影のように見える。
長谷川 時夫



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