「2004年2月」

長谷川 時夫

 ラダックから僧侶10名と政府の職員が1名、ミティラー美術館にやってきた。雪は3メートル近い。ユンボを動かして美術館の玄関の雪をどかしたり、彼らの宿舎となる教員住宅に登る道を圧雪した、忙しい日だった。十日町に着いたというので、彼らの所へ行き、それぞれに雪の入らない長靴を買った。チベット服は降り積もる雪に濡れてしまうので、ベンチコートと厚い靴下を買った。登ってきたマイクロバスは菅沼の辺りで動かなくなった。車で迎えに行こうとしていると彼らが運動靴で雪道を歩いてやってきた。バスで待っていた3名の僧を迎えに行く。それほど雪は激しくはないが、雪の森は四輪駆動車でないと大変だ。バスはスタットレスタイヤにチェーンを付けて1時間も経ってからやってきた。
 衣装が個性的で長老はシヴァ神のような巻き髪を結んでいる。十日町の大型店の中で彼らと話をしていると彼らの姿に町の人は少し威厳を感じているようだ。今まで世界各地の舞踊団を連れていった時とは少し異なる雰囲気がある。やはり僧なのだ。彼らに日本のラダックだというと喜んでいた。良い言い方だとも言っていた。
 美術館のストーブを囲んで身支度を整え、雪道を重い荷物を宿舎に向かう。夕方になりリーダーが僧侶を一人連れてやってきた。現地にメールを送ったり、電話をかけたり無事に着いたことを伝える。野菜やアタ(玄小麦)などを抱えながら戻るとき、私はまた「日本のラダックはどうか」と聞いた。彼らは笑いながらメールで「エスキモーの所」に来たみたいだと書いて送ったと言った。彼らも言っていたが、ラダックから日本にこのようなグループが来たのは初めてだそうだ。当初、札幌の雪祭りに2日だけ参加する予定。そんなことを大使館から聞かされ、もったいないとなんとか滞在を延ばすことが出来た。横浜での公演はその意味で貴重な機会だと思う。100人限定の場所。ほとんどの人がまだ情報を知らない。口コミで知らせて欲しいと思っている。


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